蝉の声が聞こえる。不思議とやる気が出る。
小学2年の夏でした。
クワガタ虫採集のため、いつものように僕は、クヌギの木の下を素手で掘り起こしていました。狙いはヒラタクワガタで結構大き目のでした。いっしょにいた仲間達は口を揃えて「そんなとこ掘ってもヒラタ出んて(名古屋弁)」って言いました。無根拠かつ消極的なその言葉に少々ムカついてはいたが、絶対ここにいると信じていたので、無視して僕はそこを掘り続けました。皆は次々と木を見て回ってましたが、僕はずっと同じ場所を掘り続けました。そして掘り続けること3日間。。。結局、彼等の言った通りそこにはいませんでした。
クワガタ採集4日目。今日で夏休みも終わり。
僕はまた同じ木の下を掘ることにした。しかし今日も彼等の言う通り出ません。日が沈みかける頃、事件はおきました。4日間も掘り続けたので、その木の根元は殆ど丸出しの状態になっていました。そこで、力任せにその木を押してみると「ガサガサガサ」と大きな音をたて倒れて行くではありませんか!樹木が倒れる音がクヌギ林一面に響き渡りました。その木は高さ10メートルほどか、小さかった私にはそれ以上に大きく見えました。こんなに大きなものが、目の前で倒れて行く様は初めて見ました。それはとてつもなく大きな感動で、その瞬間クワガタが取れなかったことなんてどうでもよくなりました。
結局4日間で僕はゼロ匹の収穫で、他の仲間はカブトムシやらコクワガタを何匹か捕獲したようでした。しかし、4日目の帰り道はクワガタの話題なんて一つも出ず、何故かずっと木を倒した話題で持ち切りでした。
夏休みの日記にはこのことは書きませんでした。先生に怒られそうだったからです。
新学期も始まる頃、この伝説は学校中に広まっていましたが、クラスの女子は首を傾げていました。