米村ゼミの掲示板
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▼二年金成 RES
作品紹介

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』

原作:キングレコード / EVIL LINE RECORDS
キャラクターデザイン:IDEA FACTORY
オトメイト
シナリオ:百瀬祐一郎

〈あらすじ〉
H歴、武力による戦争は根絶され、人々は武器ではなく人の精神に干渉することができる特殊マイク=ヒプノシスマイクを使って争うようになった。ヒプノシスマイクを通したリリック(歌詞)は人の交感神経、副交感神経等に作用し、様々な状態にすることが可能である。人々はヒプノシスマイクを使ったRapで優劣を決める。女性優位な世界で男性は中王区以外のイケブクロ・ディビジョン、ヨコハマ・ディビジョン、シブヤ・ディビジョン、シンジュク・ディビジョン等の区画で生活する。各ディビジョンの代表グループによるRapバトルが行われ、勝ったディビジョンは他の領土を獲得することができる。武器ではなく言葉が力をもつ世界で男たちの威信をかけたテリトリーバトルが今始まる!

〈考察〉
曲中に「ペンは剣よりヒプノシスマイク」という言葉がある。これは「ペンは剣よりもつよし」ということわざをもとにした言葉である。また武器ではなく言葉(Rap)で争うという設定も踏まえると、この作品には言論は武力に勝るという強いメッセージが込められていることが分かる。インパクトが強い歌詞と個性的すぎるキャラクターが印象的な作品ではあるが、そこに込められたメッセージを忘れてはいけない。この作品は主にCDで展開されていて、各CDにはRap曲とドラマパートが収録されている。ソロ曲にはキャラクターの個性と信念が強く反映され、生い立ちを語る形式のものもある。どの曲も非常に魅力的であり、声優×Rapという珍しい試みは成功したと言えるだろう。作品の特徴としてファンがRapバトルに参加できる点が挙げられる。作中で行われるRapバトルに実際に投票することができ、それをもとに勝敗が決まるのだ。作品の中の出来事に参加することで自分も物語の一員だと感じられる。まだまだ世界観やキャラクター同士の関係性に謎が多いので今後も注目していきたい。

前期の作品紹介です。提出が遅くなってしまい申し訳ありません。
2018/10/3(Wed)12:53 ...No.1662
▼三年 平田 RES
夏休み課題30点(14〜19)
※20を間違えて下に投稿しました

M 隠れオタクの恋愛戦略(漫画) 大場玲耶
隠れオタクの成海春斗は、同じく隠れオタクである進藤結衣に自ら告げずにオタクだと気づかせたい。しかし、優衣はオープンオタクが嫌いな春斗とオタバレせずに仲良くなりたい。素直に話せば良いだけなのに、なかなか進展しない2人の関係。隠れオタク同士のスレ違いまくりラブコメディ。
日常で同士を探す人にはよく共感できる作品。実は結衣は幼い頃から春斗の真っ直ぐさに惹かれており、ぜひ仲良くなりたいと思っている。LINEのアイコンや身長、本屋など、オタバレスポットはたくさんあるのだな…と苦しくなった。春斗のオタク度がわりと高く、リアクションは見ていて楽しめる。どのキャラクターもパリピ、非オタ、ニワカオタ、オープンオタと、「現実にいるよな〜」というラインで誰かには感情移入ができる。既刊2巻だが、2巻ラストに新キャラが出てきたので、今後が気になる作品である。

N 舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺 制作︰マーベラス 演出脚本︰末満健一
西暦2205年。歴史改変を目論む「歴史修正主義者」が過去への攻撃を開始した。対峙する時の政府は歴史の守りとして「審神者」なる者を過去へと派遣する。物の心を励起する審神者の力によって生み出された、刀剣に宿りし付喪神「 刀剣男士」たちは、審神者と共に歴史を守る戦いへと身を投じる。ある日、彼らの本丸に新しい刀剣男士が顕現する。不動行光──戦国武将・織田信長が佩用し、彼に仕えた近習・森蘭丸へと授けられることとなる一振りである。不動行光は信長の愛刀であったことの誇りを顕わにするが、同じく信長を元主とする宗三左文字、へし切長谷部、薬研藤四郎らとうまく噛み合わない。
近侍に任命された山姥切国広は、不動行光の参入により和の乱れた本丸を立て直そうと奔走する。そのさなか、審神者より天正十年──織田信長が果てた歴史的事件「本能寺の変」へ出陣の命が下だるのだった。
人気舞台『刀剣乱舞』の第1作目。当時発表・実装直後だった刀剣男士、不動行光の登場で話題を呼んだ。本能寺の変を舞台に、織田信長とは何者であったかがテーマとして描かれる。歴史上の人物、織田信長の側近であった森蘭丸と本能寺の変首謀者である明智光秀の葛藤も取り上げる。
また、刀剣男士の使命である「歴史を守る」とはどういうことなのか、この第1作では特に強く取り上げられている。そもそもが織田信長への思い入れが異なり、不動行光はしきりに「信長様に会える!」「蘭丸に会える!」と喜ぶ。しかし、すぐ目の前で死にゆく自分を愛してくれた人をなぜ救ってはいけないのか。不動行光が苦悩する様子が痛々しく、またそれを乗り越えるシーンは涙無しでは見られない。タイムスリップものにおいて、歴史を変えてはならないというのは鉄則のようなものだが、刀剣乱舞は「なぜ歴史を変えてはならないのか」について原作ゲームから追及している。歴史を守るために戦う、歴史にあった刀たち。しかし、一部辛い運命を辿った持ち主のことを知る刀たちに、その歴史を守れというのは、審神者は多少酷なのではないかと考えた。

O舞台『刀剣乱舞』再演 燃ゆる本能寺 制作︰マーベラス 演出脚本︰末満健一
あらすじはおおまか上記Nと同様のため割愛。
文字通りNの再演である。しかし、再演でありながらその有り様は異なる。上手下手の交代、主要キャラクター三日月宗近の台詞や森蘭丸の台詞、「煤けた太陽」という舞台『刀剣乱舞』のキーワードとなる単語の追加などの台詞の改変が行われている。再演が上演された当初、三日月宗近はタイムリープしているのではないかという考察が上がったが、舞台『刀剣乱舞』最新作にてそれは明確なものとなった。再演から、舞台『刀剣乱舞』はタイムリープを繰り返す世界として描かれている。それに歴史上の人物である森蘭丸がうっすらと気がついている。虚伝では明智光秀と話す際、ころころと表情を変えていたにも関わらず、再演では終始苦しそうな表情で会話をする。また、再演にて追加された台詞に「上様を今度こそお守りする」とある。刀剣男士がループに気づくのならまだしも、もともとその時代に存在した人物がループに気づきかかっているのは、歴史を守るという刀剣男士の使命からすると良くないのではないかと思う。その人物はその時代外の人間ではないのであり、その人物の行動が歴史そのものとなる。時代外から訪れた刀剣男士とは立ち位置が異なる。歴史上の人物が勘づき動くことで、「守ろうとしている歴史は、どこで誰が定義付けられた歴史なのか」の説明が必要になってくるのだ。その説明が不明瞭である以上、刀剣男士たちが守ろうとしている歴史は果たして何なのか、曖昧化され、「歴史を守る」これ自体が揺らいでしまう気がする。タイムリープものは難しいなと思った。

O 舞台『刀剣乱舞』外伝 此の世らの小田原 制作︰マーベラス 演出脚本︰末満健一
ある日、主より調査任務を命じられた山姥切国広、へし切長谷部、小夜左文字の三振りは自分たちが到着したのが目的地ではないことに気づく。そこは小田原征伐発生前の小田原。山姥切国広たちは、山犬の群れに襲われるひとりの男をなりゆきで助けることとなる。男の名は藤原在吉。足利長尾氏当主・長尾顕長の命により、山姥切国広を打った刀工の弟子であった。なぜ山姥切国広たちはこの時代にたどり着いたのか。小田原城の麓で出会う、或る一夜の出来事。
舞台『刀剣乱舞』第4作目、ジョ伝前に一夜限り、小田原城下で行われた野外公演。生憎の雨だったが、脚本とその熱量から評判高い。雨のため余計に臨場感が増し、迫力があったとも言える。
自身が長船派刀剣の写しであることをずっと気にしている山姥切国広が、自身の刀工堀川国広の弟子と出会うことで話は始まる。この作品の敵は、足利城主長尾顕長、山姥切国広の元の持ち主に取り付いた山姥である。第3作もそうだったように、舞台『刀剣乱舞』は元の主を最終的な敵に添えがちであると思った。山姥切国広を美しいと、あなたのような刀を打ちたいと弟子に言われ、山姥切国広の写しコンプレックスは多少晴れたかと思われる。
また、この公演は時系列では第3作義伝の前なのだが、義伝で苦悩していた小夜左文字のきっかけが、へし切長谷部の発言であったことが判明した。へし切長谷部は山姥切国広を思いやった故の発言だったのだが、結果的にそれが小夜左文字を苦しめる結果となる。へし切長谷部の勝負のふっかけで時代に留まり山姥切国広の悩み解消に繋げるなど、へし切長谷部はとても優しい刀であるが、その優しさが如何せん伝わりにくく不器用である。そんなところが好きです。

P アイドリッシュセブン(アニメ) 制作︰TROYCA 監督︰別所誠人
 「小鳥遊事務所」に集められた、未来を担うアイドルの卵たち。 お互いに出会ったばかりの7人は、性格も個性もバラバラ。 けれど、それぞれに異なる魅力を持ち、アイドルとしての未知の可能性を秘めていた。 グループを結成し、共に第一歩を踏み出した彼らの名は「IDOLiSH7」。 光り輝くステージで歌い踊る姿は、
やがて人々の心を惹きつけていく。 華やかだが、時に厳しいアイドルの世界で 彼らは夢を抱きながら、その頂点を目指す――!
 アプリゲーム「アイドリッシュセブン」の万を持してのアニメ化である。もともとMVなどでアニメ化の期待度は高かったように思う。
元のゲームでのメインストーリーがフルボイスであるため、アニメはどう変わるか楽しみにしていたが、キャストのコメントなどを見ると、ゲームは好きに演技できたが、アニメは絵と合わせる時間の制限があるため、多少難しかったようだ。しかし、そんな様子は露とも見せず、ゲームのキャラクターのまま上手くアニメにはめ込んでいた。ストーリーと楽曲が1曲ごとに深く絡むのがアイドリッシュセブンの魅力だが、アニメによりさらに楽曲に思い入れが深まった。例えば、IDOLiSH7デビュー前に先立ってデビューした四葉環・逢坂壮五のユニットMEZZO"の楽曲「miss you」が、アニメにより歌詞を変え、IDOLiSH7Ver.が作られたりした。ゲームのボイスだけでなく、ライブシーンも加えられたことにより、よりキャラクターが魅力的に見え、やはりキャラが動くアニメっていいなあと感じた。
注目したいのはOPだ。各キャラクターがソロで映るシーンでは、必ず各キャラクターの数字、また関連するポイントが背景に入れられている。細かい。一時停止で見たい。MVやアニメと共通性の高いパフォーマンスでライブも話題になった。2期も決定し、目が離せないコンテンツである。

Rはたらく細胞(アニメ) 制作︰david production 監督︰鈴木健一 原作︰清水茜
ここはとある「人」の体内。その中では数十兆個もの細胞が年中無休で働いている。赤血球は酸素を身体中に運び、免疫細胞たちは細菌やウイルスなどの身体を脅かす異常と戦い、その他の細胞も自分たちの働きを全うしている。小さなことから大きなことまで様々な騒動が起こる身体の中で、新米の赤血球「AE3803」や白血球「U-1146」などを中心に、そんな細胞たちの日常を描く。
擬人化ものが増える昨今だが、その中で生まれた細胞の擬人化という斬新な設定が面白い。病気や各細胞の役割について薬学科に通う友達に聞けば、「曖昧にだいたい合ってる」らしい。今までただ病院に行くだけだった自分の体のことが少しだがわかった気がして、もう少し健康に気を使おうと思う。血小板の可愛さで一躍有名作品となった。今のところマクロファージさんが最強だと思う。何の変哲もない細胞のCVに石田彰氏が起用され、あの細胞がモブなわけがないとも話題になった。実際がん細胞として物語のターニングポイントとなった。ほのぼのとした細胞たちの日常を描く日常ものでありながら、同時に健康促進作品にもなり得る、良い作品だと感じた。
また、今夏記録的な猛暑だったが、その際には原作漫画「熱中症」の回が無料公開されたり、アニメの素材が教育施設に対し使用自由になったり、懐の深いコンテンツである。
2018/10/1(Mon)00:28 ...No.1661
▼三年 平田 RES
夏休み課題30点(14〜20)

S僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 二人の英雄(アニメ映画) 製作︰東宝(他) 監督︰長崎健司 原作総監修他︰堀越耕平
人口の約8割が何らかの超常能力「個性」を持って生まれる超人社会を舞台に、何の個性も持たずに生まれた少年・緑谷出久(通称デク)が、ナンバーワンヒーローのオールマイトに素質を見出され、ヒーロー輩出の名門校である雄英高校に入学して一人前のヒーローを目指して成長していく。
ある人物からの招待を受けて巨大人工移動都市「I・アイランド」を訪れたデクとオールマイトが、「無個性」の少女メリッサと出会い、デクは彼女にかつての自分の姿を重ね合わせる。そんな折、鉄壁のセキュリティを誇るはずのI・アイランドの警備システムがハッキングされ、ヒーロー社会を揺るがす、ある計画が発動する。
少年ジャンプ連載「僕のヒーローアカデミア」の劇場版である。
平和の象徴・オールマイトが若き日の友人デヴィッドの娘、メリッサに招待されたことからすべてが始まる。オールマイトも身動きが取れなくなったところを、出久たちがなんとか脱出劇を試みる。中途、走り出したメンバー全員に見せ場が与えられ、特にお茶子ちゃんを助けに来た爆豪には震えた。無個性であるメリッサは、その分発明でヒーローを補佐する自分なりのヒーローのなり方を考えている。それらはすべて偉大な発明家父の背を見て育ったからなのだが、これまで無個性の出久に感情移入して僕のヒーローアカデミアを見てきた読者にとって、このメリッサの考え方は出久になかったもののため輝いて見え、応援したくなった。その分、余計に途中のデヴィッドが事件の発端であったという種明かしが重くのしかかる。実際の元凶は違ったのだが、デヴィッドが罪を犯したことは変わりなく、たとえそれが友人オールマイトのためであっても許されないことである。メリッサのことを思うと、あまりにも残酷なストーリー展開だった。
最後、メリッサにもらった機械で出久はオールマイトと共に敵を倒す。それはメリッサの夢を実現する希望となる。オールマイト・デヴィッド世代から出久・メリッサ世代への交代が顕著に表された。二人の英雄という副題も納得できた。
2018/10/1(Mon)00:27 ...No.1660
▼二年 葛山 RES
夏休み課題(6〜10)

Eドラマ『白い影』
町の病院を舞台に、優れた技術を持つ一方、無愛想でどこか謎めいた外科医・直江庸介『中居正広)と、最初は彼を非難していた看護師の志村倫子(竹内結子)が惹かれあっていく物語。しかし、直江の身体は病に蝕まれていた…。
お互い惹かれ合い、このまま幸せに暮らすのだろうと思っていたら一気に絶望へ突き落とされるシーンは涙してしまう。病気を言わず隠し続けた直江の優しさと、最後に2人の愛によって生まれた奇跡を最愛のひとに告げることができなかった倫子の後悔が入り混じる最終話は、ただの悲劇で終わらせることのできないシーンとなっている。


F小説『散り椿』
18年前、藩の不正を訴えたことであらぬ疑いをかけられ自身が藩を追われることとなった瓜生新兵衛。新兵衛の妻である篠は、新兵衛とともに藩を立ち去るがもともと体の弱かった篠は病に伏せる。そんな篠が死ぬ間際、新兵衛に「お願いがある」と切り出し、「私が死んだら故郷の散り椿をもう一度見に行ってほしい」と語る。新兵衛はもちろん了承するが、篠にはもう一つ願いがあった。
篠の死後帰藩する新兵衛だが、藩は田中屋惣兵衛が和紙の独占売買に成功し家老のみが私腹を肥やしている状態だった。新兵衛と同じ道場で稽古をしており共に「四天王」と呼ばれたうちの1人で篠と婚約するはずだった榊原采女と再会し、18年前の事件の真相を突き止めようと動き出すとともに、篠が残した願いの本当の意味をそれぞれが感じとっていく。
この作品は本当に美しい時代小説だと思う。最初に新兵衛と京でささやかに、病気を患っていながらも幸せに暮らしている篠の願いを語るシーンから始まる。すでにここから泣けるのだが、篠のもう一つの願いというのがもっと泣かせにくる。帰藩した新兵衛に待ち受けているのは、うやむやにされた18年前の事件(采女は新兵衛が離藩したのち何者かに殺された)によって腐り果てた家老たちと、真相を解明されるのを恐れる黒幕であった。様々な事件に巻き込まれていく新兵衛だが、それとともに気になるのは篠の本当の想いである。それが篠の立場から語られるのは最終章になってからである。どうして篠は采女ではなく、新兵衛を選び付いて行ったのか。「男はただ愛のために剣を振るう」この言葉通り、事件の真相を追いながらも愛によって翻弄される者たちを華麗に描いているのでぜひ読んでみてほしい。


G映画『散り椿』
前述した小説『散り椿』とあらすじはほぼ同じなので割愛させていただく。
映画版は巨匠木村大作監督、主演岡田准一、采女役に西島秀俊、篠役に麻生久美子など粒ぞろいのキャストに心踊った。ストーリーは111分と限られた時間にぎゅっと小説の内容を押し込んだ印象は全くなく、小説の重要場面を自然に繋げていった感じだった。原作の最終章にあった篠が新兵衛と結婚しようと決めた過去の場面が映画版には描かれていかなかったのはとても残念だが、木村監督が「日本で一番美しい時代劇」と言っていた通り、人物に焦点を当てながらバックとなる屋敷や竹林や椿の色彩を活かした撮影はさすがだと思う。木村監督と岡田准一が初めてタッグを組んだ前作の『追憶』と同様に今回も岡田は撮影陣にも加わっている。また今作の注目である殺陣の指導にも岡田は関わっており、役者としてだけでなく多方面で才能を発揮しているのがわかる作品である。私が一番気に入ったのはエンドロールの名前が全て本人の手書きであったこと。この演出は木村監督ならではだと感じた。

H映画『ジュラシックワールド』
ジュラシック・ワールド事件から3年後の2018年。パーク崩壊後も、イスラ・ヌブラル島では恐竜達が自由に島中を徘徊して生きていた。が、島北部のシボ山で火山噴火が起き、島の恐竜達は存亡の危機にさらされる。ある嵐の夜、イスラ・ヌブラル島である傭兵の一団が、前作でラグーンの底に沈んだインドミナス・レックスの遺体を回収すべく、小型潜水艇でラグーン内を探査していた。傭兵たちは、任務中にティラノサウルスとモササウルスに襲われるも、何とか目的のインドミナスの骨を回収し、依頼主の「上司」の元へ持ち帰った。
恐竜保護を目的とした団体「Dinosaur Protection Group(DPG)」を設立した「ジュラシック・ワールド」の元運用管理者クレア・ディアリングは、イスラ・ヌブラル島の恐竜を救出するため、故ジョン・ハモンドの元ビジネスパートナーであったベンジャミン・ロックウッドを訪ね、彼の支援・サポートを取り付ける。また、ベンジャミンに仕えるロックウッド財団の経営者イーライ・ミルズの依頼でヴェロキラプトルのブルーを捜索するため、元恐竜監視員のオーウェン・グレイディを雇い、彼ら探検隊がイスラ・ヌブラル島に向かった…。
前作を観ていなくても間違いなく楽しめるエンターテイメント映画である。凶暴化した恐竜に屋敷内で追われるシーンは誰もがハラハラドキドキする展開となっている。CGを駆使した映像はリアルで、まるでこの世界に恐竜が存在しているかのような錯覚になる。恐竜との対立だけでなく、それをどうにかしたいと奔走する登場人物たちから共存することの難しさと多様性の問題が提起されている。この世界観を味わうと、今の世界が人間同士で争い血を流しているのが本当にあほらしく思えてくる。


I映画『二重生活』
直木賞作家・小池真理子の同名小説を、ドラマ「ラジオ」で文化庁芸術祭大賞を受賞するなど、数多くのドラマやテレビ番組を手がける岸善幸の劇場デビュー作として映画化。門脇麦演じる大学院生が近所に住む既婚男性を尾行することで、他人の秘密を知ることに興奮を覚えていく。大学院の哲学科に通う珠は、担当教授のすすめから、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する「哲学的尾行」を実践することとなる。最初は尾行という行為に戸惑いを感じる珠だったが、たまたま近所に住む石坂の姿を目にし、石坂の姿を追う。一軒家に美しい妻と娘と暮らす石坂を、珠が尾行する日々が始まった。主人公・珠役を演じる門脇は本作が映画単独初主演作。石坂役を長谷川博己、教授役をリリー・フランキー、珠の恋人役を菅田将暉がそれぞれ演じる。
あらすじを読んだだけで異色感が伝わってくると思うが、本当にこの作品は異色だった。恋人と同棲している珠のマンションの管理人が「ゴミの違法投棄をやめさせるため」にゴミ置場に監視カメラをつけたところからこの作品の「哲学的尾行」は始まっている。それは見ているうちに、尾行している珠を我々観客が尾行している感覚に陥るからである。特に、前から珠の表情を撮るカットだけでなく、普通の映画やドラマではあまりない珠の後ろからのカットはドキュメンタリーチックでリアルさが増す演出となっている。作品考察したくなるような伏線や演出が散りばめられており、誰かと一緒にみると、そのあとどうしても考察したくなる作品となっているのでぜひ見てほしい。
2018/10/1(Mon)00:10 ...No.1659
▼二年 葛山 RES
夏休み課題(1〜10)

@映画『検察側の罪人』
都内で発生した殺人事件。犯人は不明。事件を担当する検察官は、東京地検刑事部のエリート検事・最上(木村拓哉)と、刑事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野(二宮和也)。最上は複数いる被疑者の中から、一人の男に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。その男・松倉は、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の重要参考人であった人物だ。最上を師と仰ぐ沖野は、被疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるのだが、松倉は犯行を否認し続け、一向に手応えが得られない。やがて沖野は、最上の捜査方針に疑問を持ち始める。「最上さんは、松倉を、犯人に仕立て上げようとしているのではないか?」・・・。互いの正義を賭けて対立する二人の検事。彼らの戦いに、待ち受けていた決着とは――。
この映画は原田監督が述べていた通り「演技合戦」である。主演の木村拓哉×二宮和也の2人が演出する人間模様と、正義と正義のぶつかり合いは実際に先輩後輩であるこの2人だからこそできたものであろう。123分間緊張しっぱなしでないと少しでも集中が途切れると、次から次に交錯する会話と流れに置いていかれてしまう。見終わると多少の疲労感があるくらい濃い内容であり、どちらか正義が正しいのか意見が分かれるため、いっしょに見た人と語り合えるかも。


A映画『銀魂2ー掟は破るためにあるー』
時は幕末――地球人と宇宙人・天人が共に暮らす江戸・かぶき町。仕事がなく金欠の<万事屋(なんでも屋)>メンバー=銀時(小栗旬)、新八(菅田将暉)、神楽(橋本環奈)は、キャバクラに床屋とバイトを始めるが行く先々で将軍・徳川茂茂(勝地涼)に出くわしてしまい、打ち首覚悟で接待する羽目に――。その頃、真選組始まって以来の大事件が勃発! 局長・近藤勲(中村勘九郎)の暗殺計画が企てられ、副長・土方(柳楽優弥)は第2の人格=へタレオタク“トッシー”に体を乗っ取られ真選組を追われてしまう。犬猿の仲の銀時に頭を下げて助けを求める土方だが、裏では、銀時の因縁の相手・高杉(堂本剛)率いる鬼兵隊が将軍・徳川茂茂の命を狙い、幕府の転覆を企んでいた。果たして銀時は、江戸の町を守れるのか――!?
大人気漫画を実写映画化した作品の第2弾。大成功に終わった前作であったが、日本アカデミー賞で無冠に終わったことを今作では皮肉るところから始まる。真選組動乱編は原作派からも熱い支持を受けている部分であるが、見どころの部分は原作に忠実に再現している。しかし、助演男優、女優もかなり豪華なキャスト陣であり、リアルなCG演出で制作費のかなりを使ってしまったのではないかと思うほど、新撰組の衣装が陳腐なのが少し気になってしまう。それを気にしなければ終始笑えて、最後は泣ける映画になっていたと思う。


B映画『武士の一分』
幕末時代の海坂藩。藩主の毒見役を務める侍、三村新之丞は妻・加世と慎ましくも幸せに暮らしていた。新之丞は毒見役に関心はなく、隠居して剣術道場を開いて子供たちを稽古することを夢見ていた。そんなある日、いつも通り毒見を終えた新之丞は身体の異常を訴え倒れてしまう。城内は藩主を狙った毒殺未遂に騒然となるが、原因はつぶ貝の毒だと判明し、城内は落ち着きを取り戻すが、広式番の作之助は責任を取らされ切腹し、新之丞も意識不明の状態となってしまう。新之丞は3日後に意識を取り戻すが、毒が原因で失明してしまう。加世は医師の玄斎を頼るが、彼は「新之丞の目はもう治らない」と告げる。
目が治らないと知った新之丞は取り乱すが、加世の献身的な支えにより落ち着きを取り戻す。ある日、新之丞の叔母・以寧から「夫・東吾が、加世が他の男と一緒にいるところを見た」という話を聞かされる。新之丞は叔母の話を一蹴するが疑念は募り、中間の徳平に命じて加世を監視させ、加世と島田が密通している事実を知ってしまう。加世から「島田に身体を預けることを引き換えに家禄を安堵された」と聞かされ、激怒した新之丞は加世を離縁する。
しかし、同僚の加賀山から、「家禄の安堵は藩主の温情からもたらされたものである」と聞かされ、島田は事情の分からない加世を弄ぶために家禄を口実に加世を騙したことを知り、新之丞は自らの「武士の一分」を賭けて島田に果たし合いを挑むことを決意する。
まず、新之丞を演じる木村拓哉と妻の加世を演じる檀れいの2人は、ドラマや現代を描く映画では普通に立っているだけでオーラが出てしまうであろうが、この映画内の2人は仲睦まじく平凡な暮らしをしているのが伝わってきてさすがだと思った。ベルリン国際映画祭で上映された際、絶賛された木村の演技であったが山田洋次監督は「セリフで演じてはいけない」と常に言っていたそうで、例えば夫にただ駆け寄るシーンでもセリフが無い場合表情で芝居をしなければならなかった。素人はセリフを言う口調や表情に注目しがちだが、セリフのないシーンというものに真の演技力が試されるのだろう。初めはそれに苦戦していた役者たちも、徐々に表情で演技ができるようになったそう。目が見えなくなった新之丞には見ることのできない表情であっても、観客はその様々な表情を見ることができ、新之丞には伝わっていないだろう加世の気持ちまで推測して見ることができる。だからこそ加世に感情移入していき、心動かされるのだと思う。またこの映画は、全編にナレーションが入っており、視覚障害がある人でも作品をそのまま堪能できるようになっている。
この年の日本アカデミー賞では12部門にノミネートされ、興行収入は当時の松竹配給映画で最高の40億を超えた。


Cドラマ『ロングバケーション』
落ち目のモデル、葉山南(山口智子)は結婚式当日に婚約者が失踪してしまい、そのルームメイトだった冴えないピアニスト、瀬名秀俊(木村拓哉)とやむを得ず同居することになる。婚約破棄で落ち込む南に瀬名は人生がうまくいかない時は「神様がくれた休暇」だと考えようと提案し励ますが、一方で瀬名も自分の才能に自信を持てず、後輩の涼子(松たか子)との恋もなかなか進展しない。瀬名と南はトラブルだらけの同居生活の中で、次第にお互いがかけがえのない存在になっていく。
名前だけは聞いた事ある、という人も多いのではないだろうか。1996年放送ということもあり私たち世代ではない作品ではあるが、見直してみると瀬名が抱えている問題は現代の若者にも当てはまるものだと思う。
当時は瀬名のようにピアノを習い始める男性が増える「ロンバケ現象」が起こり、月曜9時枠だったため「月曜の夜は街からOLが消える」とまで言われたほどの人気だった。キャストは竹野内豊や松たか子、広末涼子など豪華な顔ぶれである。
この作品は、自分に自信がなかったり、何を目標に生きていけばいいのか悩んでいたり、少し人生の休暇が欲しいひと、最近恋愛にご無沙汰なひとに見てほしい。


D舞台『TWENTIETH TRIANGLE TOUR 戸惑いの惑星』
不意に手渡された一通の手紙。そこには不思議な質問が記されていた。深く遥かな、心の奥を探るような問いかけ。そこから、この舞台の「旅」は始まる。
三池(坂本昌行)は画家をめざした。由利(長野博)は子ども時代に目にした「奇跡」を研究しようとした。長谷川(井ノ原快彦)は作家を志した。せちがらいこの世の中に抗うように、「夢」を追い続けた3人の男たち。けれど終わりなき闘いは、彼らを少しずつすり減らしていく。そんな時に訪れた突然の再会。そこには懐かしいメロディが流れていた。あふれ出し溯っていく記憶は、大きなうねりとなってほとばしりその流れの中にはそれぞれにとって大切な女性の姿があった。よみがえる甘く切ない痛み、恋の想い出。メロディはさらに3人が心にフタをしていた様々な想いを呼び起こしていく。
叶わなかった夢、取り戻さなければいけない大切なもの。混乱しながら時空の狭間を彷徨う3人を、「現在」へと連れ戻すのも、決して忘れることのできない、あのメロディだ。思い通りにならなくても、つらくても、遠く離れてしまっても絶対に切り離すことのできない「本当の自分」に、3人は音楽に導かれ、再びめぐり合う。
不惑の歳を迎えた3人が描く戸惑いと戸惑いと戸惑いは精神論的な要素が強い作品となった。どこからどこまでが夢の世界なのかわからない。落語のように3人の語りから始まり、急に物語がスタートする演出はこの作品の夢と現実のつながりを曖昧にする点で大きな効果を持っていると思う。公演のなかにトニセンの3人の楽曲が散りばめられていて、それをもとに作品が作られてるわけではないにもかかわらず、そう思ってしまうほど物語と楽曲がうまく絡み合っている。最後まで観てもすぐにもう一度みてみたくなった。悲劇なのか喜劇なのか?観る人によって様々に捉えられる作品である。
2018/10/1(Mon)00:08 ...No.1658
▼三年 柿崎 RES
夏休み課題30点(21〜30)
㉑BLACK LAGOON(アニメ全24話) 原作 :広江礼威 、監督:片渕須直
日本のサラリーマン・岡島緑郎は海賊「ラグーン商会」に身代金目的で攫われるが、上司に売られ反対に命を狙われる。ラグーン商会の二丁拳銃使い・レヴィとボスのダッチ、機械に強いベニーの三人に拾われ、岡島は「ロック」と名乗り海賊の一員になることを決意。タイの暴力犯罪都市・ロアナプラを中心に、マフィア間の抗争、凶悪メイドとの戦闘、闊歩する殺人鬼の殺害などロックは様々なトラブルに巻き込まれていく。
主人公のロックは日本で平凡に暮らしてきた男性であり、犯罪都市に馴染む暮らしをしてきたレヴィと対照的に描かれている。二人が衝突し認め合い相棒となっていく過程は波乱に満ちているが、「男女の相棒もの」として見ごたえがあるストーリーとなっている。また、犯罪都市が舞台となっているため、主に女性の戦闘が多く、非常に強く魅力的な女性が多い。強い女性が好きな人は必見。

㉒青野くんに触りたいから死にたい 1巻(コミック)|椎名うみ
高校二年生の刈谷優里は違うクラスの青野龍平に一目惚れする。念願の末つきあうことになった二人だったが、数日後青野は交通事故で亡くなってしまう。悲観に暮れる優里のもとにユーレイとなった青野が現れ、生者と死者でありながら共にいることを選ぶ二人。幸せの絶頂期のいるはずだったが、青野は次第に人格が豹変するようになる。
刈谷優里は純粋すぎるメンヘラ少女であり、幽霊相手にも引かない頑固さが魅力な登場人物で、序盤は幽霊でありながら平凡なままの青野が押され気味なのが面白かった。しかし青野が豹変し優里の生命力を吸い取っていると思われる場面があり、その間青野の記憶がなくなっていることから、青野に異変が起こっていることがわかる。生者と死者は幸せになれるのか、一巻だが既に先の展開が楽しみな作品である。

㉓日本現代怪異事典 朝里樹著
学校の口伝で広まった怪談から、インターネット上で発生した怪異まで、戦後の日本の怪異譚を蒐集した現代怪異の事典である。
現代の怪談を図書で調べようとすると、有名な怪異は調べられても学生の間で噂されていた小さな怪談や、インターネット上で広まった最近の怪談は調べられない。この事典は、昔からあるトイレの花子さんやこっくりさんのきっかけから、インターネットの2ちゃんねるで広まったきさらぎ駅などの詳細もあいうえお順で載っており、怪異・怪談を調べる際はぜひ一冊手元に置いておきたい本だ。また、後ろのページには、【駅】【学校】など分類分けの目次もあり、類似の怪談もすぐに調べることができるので、大変便利と感じた。

㉔ズートピア 監督:リッチ・ムーア、バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ(共同監督)
草食動物と肉食動物が共存して暮らす夢の都市・ズートピア。ウサギの少女・ジュディはウサギで初めての警察官という夢を叶え、ズートピアに配属されたのだが、警察内での風当りは強い。詐欺師の狐・ニックと半ば強制的に協力関係になり、「48時間以内に解決できなければクビ」という条件のもと肉食動物ばかりが行方不明になる重要事件の捜査を始める。
草食動物と肉食動物という違いを、社会問題の「差別」として描いている。無意識に出る差別の意識がそう簡単に変えられないものと知りながら、それでも手を取り合って共存しようと努力する動物たちを見て、人間社会に蔓延る様々な差別意識払拭の必要性を意味していると感じた。

㉕ダーリン・イン・ザ・フランキス(アニメ) 原作:Code:000、監督:錦織敦史
高エネルギー体である「マグマ燃料」の発掘により、地殻変動や環境破壊が起こり地上は荒廃し人が住める土地ではなくなった。代わりに文明は著しく発展し、人類は巨大要塞移動都市の中で生活するようになる。マグマ燃料を狙う巨竜という巨大生物も出現するようになり、政府は男女一組のパイロットが乗るフランクスという巨大兵器を開発する。巨竜と人類の闘いを描いたアニメーション。
近未来のこの舞台では、人工的に人間が生み出される仕組みとなっており、男女で子を生す人間の体の機能はなくなっている。人が生まれることの困難さも、異なる人間同士が育む愛の存在も知らず、パイロットになることだけを求められてきた子供たちが、知らないまま心を通わせ合う姿は、未来の人類の在り方を考えさせられるものだった

㉖血界戦線(アニメ一期) 原作:内藤泰弘、監督:松本理恵
かつて一夜で滅んだアメリカの都市・元NYは、いまや異世界と人界が繋がる超危険地帯として、外界と隔離されていた。これは、世界の平和を守るため時には武力を使い、この危険な街「ヘルサレズ・ロット」で秩序を守る秘密結社ライブラの物語である。主人公のレオナルドは、神々の義眼という異能を持った代わりに奪われた妹の視力を取り戻すため、情報が集まるライブラの一員になる。
一期アニメは、アニメオリジナルキャラクターのブラックとホワイトの双子と、二人を操る絶望王を物語のキーパーソンとして完結する。双子が互いを思いあう兄弟愛と、人の絶望という概念故に永遠の寿命への退屈と、人類へ向ける複雑な愛情が深く描かれていた。登場人物もストーリーもクオリティが高く、アニメオリジナルということが驚きである。時折BGMで使われるモーツアルトのトルコ行進曲、魔笛などの曲が、話の重要な部分に挿入されているのが特徴的。

㉗血界戦線(アニメ 二期) 原作:内藤泰弘、監督:高柳滋仁
あらすじは一期同様。二期はライブラの構成員がそれぞれ各話のメインになっている。
単行本でも描かれた最終話の妖眼幻視行前編・後編は、主人公のレオとその妹のミシェーラの話であり、アニメ一期から続いていたレオの葛藤・過去に一端の区切りをつけた事件である。肝心な時に動けなかった自分の臆病な部分が嫌いなレオが、今度は妹を庇いながら、敵わない格上の相手に立ち向かっていく姿は、感動なしには見れない。激しい戦闘場面だが、一瞬映る蝶が一期で登場したホワイトを暗示しており、幻想的な描写として挿入されている。単行本派の人もぜひアニメを見てほしい。

㉘名探偵コナン ゼロの執行人(アニメ映画) 監督:立川譲、原作:青山剛昌
サミット会場を狙った大規模爆破テロの容疑者に、名探偵の毛利小五郎が挙がった。小五郎の容疑を晴らすため、テロの関連情報を集めるコナン。小五郎に容疑がかかったのは、喫茶ポアロのアルバイト・安室透改め公安警察の降谷零が関わっていた。
9月18日までに興行収入86.7億円を突破した、映画「名探偵コナン」シリーズ上最高興収を記録した映画である。派手なアクションと迫力ある爆破のシーンに、見ている側もどきどきさせられた。特に登場人物の降谷零のドライブテクは見ごたえがあり、二回映画を見に行ったが二回とも目が離せない迫力ある場面だった。この迫力ある描写こそ人気の秘訣ではないかと考える。

㉙ひぐらしのなく頃に(アニメ)原作:竜騎士07/07th Expansion 監督:今千秋
田舎の雛見沢村では、夏祭りの夜古い因習である「綿流し」を行う。都会から引っ越してきた前原圭一は、村でできた愉快な仲間たちと楽しい日々を送っていた。しかし村で起こった連続未解決事件と「鬼隠し」という失踪事件を知り、事件そのものを否定する仲間たちの強固な姿勢に疑念を感じるようになる。そして綿流しの晩をきっかけに、仲間の竜宮レナと園崎魅音に命を狙われるように考え始め……。
部活の仲間とのほのぼのした日常から入り、段々増していく友人への不信感、豹変したように主人公の圭一を追い詰める描写は、導入の日常パートからはかけ離れており、独自のルールで成り立っている田舎の村が舞台ということもあり、背後から忍び寄る日本ホラーみが強い。また、「ひぐらしのなく頃に」はあくまで「出題編」であり、事件が起こり誰かが殺され、また事件前に時間が戻るループを繰り返す。事件の裏・伏線の回収は、解決編である「ひぐらしのなく頃に 解」を見ると理解できる構想になっており、逆に言うと全て見なければ解決されない構想になっている。悲劇がなぜおこったのか、なぜループしているのかを知りたい人は、まずは出題編である「ひぐらしのなく頃に」から見てほしい。

㉚ひぐらしのなく頃に 解(アニメ) 原作:竜騎士07/07th Expansion 監督:今千秋
クラスメイトの前原圭一が狂乱し竜宮礼奈と園崎魅音を殺害した世界、礼奈が錯乱し学校で生徒を人質に立て籠った世界、園崎詩音が魅音と入れ替わり村の重鎮を殺しまわった世界……。雛見沢村の悲劇は繰り返され、必ず村の滅亡で終わる。雛見沢村で祀られている「オヤシロ様」の生まれ変わりと噂される古手梨花は、事件が起こるたびに必ず殺され、夏祭りの前日にタイムスリップをする。全ての悲劇を体験した梨花は、ループを解くために事件の謎を追うが……
「ひぐらしのなく頃に」が出題編、今作の「ひぐらしのなく頃に 解」が解答編となっており、今作ですべての伏線が回収される。雛見沢の風土病「雛見沢症候群」や、「東京」によって設置された極秘研究機関の入江機関、オヤシロ様の正体など、悲惨な事件の裏で蠢いていた事件・黒幕を、いくつもの悲劇をループし仲間の大切さを知った圭一たちが立ち向かってついに勝利する姿は、出題編から視聴してきた者からすれば感涙の一言。少しずつ伏線が貼られ・回収され、物語世界が広がっていく感覚は、「ひぐらしのなく頃に」を見て味わってほしい。
2018/9/30(Sun)23:55 ...No.1657
▼三年 柿崎 RES
夏休み課題30点(11〜20)
J塗仏の宴 宴の始末(小説) 京極夏彦著
新興宗教・成仙道、占い師・華仙姑処女、韓流気道会、条山房、照魔の術を使う藍童子、徐福研究会、太斗風水塾、みちの教え修身会、など怪しげな団体が競い合って静岡の韮山を目指す。戦後村人全員が殺害されたという噂があった存在しない村を目指して、さながら百鬼夜行のように。一方、関口巽は殺人の容疑で収監され、京極堂の妹・敦子と刑事の木場は行方不明。人質を取られ動けずにいた京極堂が、探偵・榎木津に発破をかけられついに動き出す。
今作には洗脳の技を使う人間が何人も登場したため、証人の証言を常に疑って読み進めていった。読了して興味深く思ったのが、「家族」という個人的な関係に第三者の目や常識を持ち込むと、関係を維持することができないことがある、という点である。今作では散り散りになった佐伯家を中心に、家族という絆の脆さが描かれていた。だがクライマックスでは、息子が家出し壊れた村上一家が、何を言わず同じ家に帰る姿を描写し、たとえ一度壊れても、共にいることが自然である家族の姿を描かれており、家族という形の普遍性や歪さが考察される。

K陰摩羅鬼の瑕(小説) 京極夏彦著
昭和二十八年の夏。旧華族・由良元伯爵家の当主・由良昂允は過去四度結婚式の夜に花嫁を殺害されていた。五度目の結婚式の日、犯人のわからない連続殺人を阻止するために招かれた探偵・榎木津、風邪のため一時的に失明している榎木津を補佐するために呼ばれた関口の両名。関口は読書好きな由良と本の話題で「あなたにとって生きているとは何か」という質問をされる。関口はうまく答えられないまま五度目の結婚式に参加するが、やはり花嫁は殺害されてしまった。
ミステリーの盲点である「死の捉え方」の認識の違いをトリックとし、「家族の概念」の認識の違いが動機の一端となった殺人事件だった。「死の捉え方」は、普通死んでいる人間を見たとして「死体」と捉えるのが一般の人間で、この事件の犯人はそれを「動かないだけ」と捉える。犯人はその体が無くなったときようやく「死亡した」と捉える。「家族の概念」は、夫がいて妻がいて子供がいて一つの家庭のことを指すのが一般の人間で、犯人にとって家族とは父以外は剥製で動かないのが当然で、妻は剥製で家から出ないものであった。種を明かせば認識の違い、それだけの事件だが、京極夏彦により民俗学に深く絡めて描かれたからこそ、そんな馬鹿なと失笑するのではなく、なるほどそういうことかと納得させられる作品になっている。

L邪魅の雫(小説) 京極夏彦著
画家の西田は、知人の女性が見知らぬ男に付き纏われていることで、男を殺害することを覚悟する。次々と死んでいく関係者の裏には、とある「女性」と「毒」が隠されていた。同じ頃、探偵・榎木津の縁談が全て断られる出来事があり、不審がった親族が縁談の調査を探偵事務所の益田に依頼する。事件は繋がっていた。
 長く続いた「百鬼夜行シリーズ」の末巻となっている。事件のトリックスターとして描かれてきた探偵・榎木津が、トリックスターではなく事件の中心人物として描かれている。普段は好き勝手に暴れる榎木津が大人しいのが特徴であり、榎木津が大切だった人との別離を選んだ最後のシーンはファン必見。
「邪魅は魑魅の類なり 妖邪の悪気なるべし」とあるように、邪魅とは邪な心として今作で描かれている。人が人の為にと人を殺すことの身勝手さを中心に据えた物語だった。


M百器徒然袋 雨(小説) 京極夏彦著
姪の早苗が奉公先の男たちに暴行された事件に心を痛めていた「僕」。友人に紹介され、心を見通すことができるという探偵・榎木津に相談するが、容姿端麗な榎木津は見た目と裏腹にアグレッシブで傍若無人な人物で、出不精の古本屋・京極堂を巻き込み「悪い奴らを退治する」と笑いながら計画を練っていく。(鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱)
いわゆる番外編であり、本編である「百鬼夜行シリーズ」が殺人事件を巡ったミステリーだったのと比べて、人が死なない比較的明るい事件を取り扱った、榎木津中心の切った張ったの大活劇である。本編が酷く考えさせられる話を取り扱っているのと反対に、すっきりする後味で大団円で終わっているのが特徴である。本編を一度でも読んだことがある人にはぜひ読んでその違いを実感してほしい。

N百器徒然袋 風(小説) 京極夏彦著
友人と招き猫の手はどちらが上がっているかという賭け事をした本島は、確認のため豪徳寺に足を運んでいた。するとどこからか「榎木津」のワードが聞こえ、つい話に首を突っ込んでしまう。化け猫に悩まされているという娘の話を聞き、榎木津は「本当に化け猫がいるなら、ぜひ会ってみたい」と珍しく事件に乗り気になってしまう。(五徳猫 薔薇十字探偵の慨然)
「百鬼夜行シリーズ」番外編第二弾である。第一弾である「百器徒然袋 雨」が独立した短編だったのと比べて、今作では榎木津に商談をだめにされた羽田製鐵会社の会長・羽田隆三の思惑が絡んだ事件となっている。前作同様の大活劇で、読んでいて非常に胸がすっきりするエンディングだった。普段人の名前を普通に呼ばない榎木津が、最後本島へ送った招待状の宛名を間違えず書いていたのはファン必読。

Oルー=ガルー 忌避すべき狼 / 京極夏彦
人がモニター越しで接触するのが当たり前になった近未来。日本では位置情報・会話・行動・個人情報が全て記録され、管理されるのが当然になっていた。その時代に、十四歳の少年少女ばかりが殺害される殺人事件が相次いで起こる。主人公の牧野葉月は、人と関わりを持ちたがらない少女・神埜歩未と、天才・都築美緒と共に、事件の被害者である矢部祐子と接触する。
京極夏彦作品の「塗仏の宴 宴の始末」で黒幕・堂島静軒が語った未来予想通りの近未来を舞台にして描かれている。堂島が、将来人間はもっとだめになると語ったように、家族という枠組みもコミュニケーションも必要不可欠なものではなくなり、食べ物も全て人工の加工品で、生き甲斐が感じられない世界だと感じた。リアリティがあるこの近未来が実現しても、友達や家族との交流を大切にしていく風習はなくてはならないものだと考える。

PSPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜(テレビドラマ) 監督:堤幸彦、加藤新、今井夏木、金子文紀
警視庁公安部が設立した、一般的に理解不能な超常現象・超能力が関わっていると思われる事件を解決する「未詳事件特別対策係」――通称:未詳に配属された元SITで武闘派の瀬文と、IQ200以上の天才だが変人の当麻が、事件でSPECという超能力を持った犯人たちに立ち向かう物語を描いている。
全10話で構成され、その後映画が5編公開された。超能力者であるSPECホルダーが毎回登場し、事件に深く関わっているのが特徴。10話目の最後、黒幕である地居聖を倒した「時が止まるSPEC」を使用したのが、死んだと思われていたニノマエだったのか不明で視聴後モヤモヤが残ったが、映画で伏線回収がされ納得がいった。今作は瀬文と当麻の男女の相棒ものであり、話が進むごとに二人の信頼関係が篤くなっていくのが見所。相棒ものが好きな人はぜひ視聴してほしい。

Q文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 恋 / 川端康成, 江戸川乱歩ほか
近現代文学の文豪が描いた怪談作品を蒐集したシリーズ。今作はさらに「恋」をテーマにした作品をピックアップしている。「緑衣の少女」佐藤春夫、「鯉の巴」小田仁二郎など。
特に川端康成の「片腕」という短編が印象に残った。「私」は美しい少女に一夜だけ片腕を”借りる”。大事にアパートに持ち帰った腕を愛すあまり、「私」は自分の腕と付け替えてしまう。「私」は少女の腕を愛すあまりついには一体となるが、無意識の拒絶か、夜目覚めたとき発作のように娘の腕を取り外して放り投げてしまう。
「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」の殺人鬼・吉良吉影を連想した。少女の美しい手だけを愛し、殺人を繰り返していた吉良吉影も、女性本体ではなく手という一部品に理想の女性像を重ねていた。「片腕」の、美しい少女の腕を愛する、という特殊な設定に合う繊細な文章表現がされており、人同士が愛す話よりもあるいは官能的に感じた。

R百怪図譜 : 京極夏彦画文集 / 京極夏彦著
三十以上の妖怪を京極夏彦の画と文でまとめた画文集である。登場する妖怪は様々であり、百鬼夜行シリーズでタイトルでも話の中身でも触れられていた、鉄鼠や魍魎、陰摩羅鬼、鳴釜や瓶長などの妖怪も含まれており、京極夏彦ファン垂涎必須の一冊。また、姑獲鳥が最後に紹介されており、「姑獲鳥の夏」はデビュー作だったこともあり、京極夏彦自身にも思い入れのある妖怪であることが考えられる。

S働く細胞(アニメ) 原作:清水 茜、監督:鈴木健一
人間の体の中にはたくさんの細胞が働いている。方向音痴な赤血球の少女は迷子になったある日、体の中で暴れまわる雑菌に襲われるが、間一髪のところ白血球の青年に助けられる。
癌、熱中症、食中毒など、私たち人間に起こりうる病気を、細胞や病原菌を擬人化し、ストーリー仕立てにすることで、分かりやすく理解しやすい説明にした作品である。人の体の構造は教科書で読んでも理解が難しい。教養補助素材として教科書か専門書で取り入れれば、人間の体の構造について向けられる関心が増えると考える。
2018/9/30(Sun)23:53 ...No.1656
▼三年 柿崎 RES
夏休み課題30点(1〜10)
@ハッピーシュガーライフ(アニメ) 原作:鍵空とみやき、総監督:草川啓造
恵まれない家庭環境にいた女子高生・松坂さとうは、男遊びを繰り返し愛を求めていた。ある日純粋無垢な少女・神戸しおを拾い、何の打算もない優しい笑顔に満たされるさとう。愛を確信したさとうは、しおとの生活を守るためバイトに明け暮れながら、手段を選ばず障害を排除していく。
いわゆるヤンデレ最強少女かと思いきや、さとうは特殊な育ちから「愛」が何かを探求し、自分に唯一人らしい感情を抱かせてくれるしおとの生活を守ることに必死になる、ただの少女だった。さとうもしおも正常な家族間で育っておらず、大人への失望・周囲への無関心さが高いため、登場する他のキャラクターも、本来なら正常な世界に連れ戻そうとしてくれる”良い家族・親友”と映るはずが、さとうとしおの"ハッピーシュガーライフ"の前では障害になってしまう。二人だけの世界で生きることを決断した二人の純愛には、一種のもの悲しさを感じたが、心中の途中でさとうが体勢を変え、しおの生を願ったことが、17歳の少女で恋ではなく深い愛情の領域にさとうがたどり着いてしまったと感じた。一人残されるしおを含め、この物語のテーマは「身勝手な愛」では考察する。

ABLEACH (実写映画) 監督:佐藤信介、原作:久保帯人
少し霊感と喧嘩が強いだけの男子高校生・黒崎一護の日常は、黒衣をまとった死神・朽木ルキアに命を救われたことで一変する。一護に力を与えたせいで死神の力をなくしたルキアに力を返すため、虚と呼ばれる悪霊を退治し霊力を上げていく一護。母親の仇である強敵の虚が現れて……。
原作が好きで見に行ったのだが、映画一本の短さとは思えない、文句のつけようがないクオリティだった。特に黒崎一護役の福士蒼汰の役の入りようには情熱を感じた。荒っぽくて面倒ごとは嫌いなのに、家族思いで正義感が強く誰かを守ろうと自分よりも格上に立ち向かう姿は、完全に”黒崎一護”だった。原作ではルキアが罪人として死神の住む尸魂界に連れ戻され処刑から救いに行く、というストーリー展開になるのだが、この映画では連れ戻されたルキアの処遇がどうなるのか・一護がルキアとの記憶を覚えているのか不明という主人公が日常に帰還するエンディングだったので、実写映画第二弾がやるのならぜひ見たいが、そのときどういった導入になるのかが客足が決まるポイントになるだろうと考える。

B銀魂2掟は破るためにこそある (実写映画) 脚本・監督:福田雄一 原作:空知英秋
何でもやる万事屋銀ちゃんは、金欠のため急遽キャバクラでバイトをすることに。足りない人員を補うため女装をして臨んだ当日、客はまさかまさかの征夷大将軍だった。失礼がないように接待しようとするが、逆に失礼しまくりで……。一方、江戸の治安を守る警察機構「真選組」では、内紛により二つに割れ局長暗殺計画が実行されていた。
原作の「将軍接待篇」「真選組動乱篇」を融合させたストーリー構成となっている。前作同様、ギャグパートから入ることで、初見の人も見やすいようになっていると感じた。特に将軍役の勝地涼が、キャバクラの王様ゲームで裸に剥かれてしまったり、床屋で髪の長さが足りないのに丁髷を結うために顔の皮膚がはがれそうになるほど引っ張られていたり、真面目な顔を保ったまま体を張ってギャグパートに翻弄されるのが見物だった。

Cオーシャンズ8(映画)  監督ゲイリー・ロス
前作までの主人公・ダニー・オーシャンの妹・デビーが仮釈放され、前代未聞の大犯罪を計画する。凄腕の仲間を次々にスカウトし、世界的ファッションブランドのイベントで侵入・獲物を強奪する手筈を整える。狙うは1億5000万ドルの宝石。デビーとその仲間たちは捕まることなく宝石を奪うことができるのか。
スティーブン・ソダーバーグ監督による人気大作「オーシャンズ」シリーズの続編。今作で活躍する登場人物は全員女性となっており、女性版オーシャンズとして好評。オーシャンズシリーズを見るのは今作が初めてだが、宝石を盗む綿密な計画と盗む際のチームワーク、鮮やかな手口が、犯罪行為なのに「かっこいい!!」と興奮してしまった。女性だけの力で物事をやり遂げたのも、同性の私から見てもカッコよく映った。

D姑獲鳥の夏(小説) 京極夏彦著
 昭和二十七年の夏。小説家の関口は、高校の同期の京極堂に久遠寺医院の娘が20ヶ月身籠り続けているという噂話を話して聞かせる。しかし、密室の中煙のように消えたという娘の夫が関口の先輩である牧郎であることが判明、偶然知り合いの探偵社にその娘の姉が事件の解明を依頼したことから、関口は真実を知るために久遠寺医院に調査に赴くが……。
 京極夏彦のデビュー作であり、百鬼夜行シリーズと読者に親しまれる第1作目の「姑獲鳥の夏」。民俗学を骨格に描かれたこのミステリーには、「京極堂」という男が登場する。京極堂は人々の心に憑く負の感情・近代社会の忌むべき習慣を妖怪に見立て、事件の謎とともに祓ってしまう。物語の初めからこつことつと積み上げられていた伏線や、登場人物同士の絡まった関係が順番に解けていく感覚は、読者からしてみても鮮やかだ。現代に生まれた文学作品として、多くの人に読んでほしい怪奇談・民俗学ミステリーである。

E魍魎の匣(小説) 京極夏彦著
 久遠寺医院の惨劇の後日。父なし子で偏見に苦しむ女学生の頼子は、妖しげな雰囲気を持つ同級生の加奈子と夜抜け出し相模湖に行く計画を立てる。しかし何者かにホームから突き落とされ、加奈子は意識不明の重体に。戦時中「死なない研究」をしていた研究所に運び込まれ一命をとりとめるが、加奈子は誘拐されてしまった。同時期に起こった少女連続バラバラ殺害事件、魍魎を蒐集して回る霊媒師「穢れ封じ御筥様」、そして研究所――全て「匣」に纏わる事件だった。
 今作は「姑獲鳥の夏」の続編として描かれる。「魍魎」とは定まった定義を持たないよくわからないものであり、それを扱うこの作品の事件は、京極堂が憑き物落としを行うまで、なかなか本質が見えてこない。前作が関口視点でずっと描かれていたのと変わり、女学生の頼子、刑事の木場、小説家の関口、同じく小説家の久保俊公の四つで描かれている。異なった視点・時系列で描かれることで、事件がより複雑に、より「魍魎」のような気味が悪い味を出しているのではないかと考える。また、タイトルにある「匣」は今作の重要なファクターであり、少女を殺害し匣につめる殺人事件は百鬼夜行シリーズの中でも異彩を放つ、狂気的事件である。

F狂骨の夢(小説) 京極夏彦著
 久保俊公の葬式で、関口は小説界の大物・宇多川崇に相談を受ける。記憶喪失の妻・朱美のもとに亡くなった夫が訪問し、錯乱した朱美は元夫の首を切り落としてしまったと懺悔したのだ。だが死体はどこにもなく朱美の妄言と思われた。しかしその後宇多川崇は殺害され、朱美が殺した夫は再び訪問したそうで……「死体が生き返る」ことは可能なのか。これは骨をめぐる物語。
 この話には、昔、同僚の少女を殺したことがあると関口の友人・伊佐間に話した朱美と、元夫が戻ってきて襲われ、首を切ってしまうという悪夢に悩まされている朱美の二人が登場し、初めは同一人物だと思ってしまう。しかし宇多川朱美が次第に記憶を取り戻していくと、過去の出来事や本物の朱美がどちらなのかが明らかになり、書き分けが出来ていたのに気づけなかった、と悔しい思いをしたり、気づけていたぞ、と嬉しくなったり。海に浮かぶ金色髑髏事件、幼少期から髑髏の山で男女が混合するサバトのような儀式を繰り返し悪夢で見る精神科医、神主から髑髏を預かり人知れず庭に埋めた牧師、十組の男女が心中した二子山集団自殺事件。タイトルにもある通り、「骨」と「夢」を重要なファクターとして物語が進んでいく。前作と前々作よりコンパクトな厚さとなっているので読みやすいと感じた。

G鉄鼠の檻(小説) 京極夏彦著
 記者の敦子と鳥口は、箱根山中に身元不明の寺があることを掴む。誰もそこに寺があったことを知らず、その寺に住む坊主すらも元の持ち主を知らない摩訶不思議な「明慧寺」。取材のため、明慧寺近くの旅館仙谷楼に立ち寄った二人だったが、仙谷楼の庭では座禅を組んだ坊主が雪に埋もれて死んでいた。
 この事件は探偵・榎木津の言葉を借りるなら、「坊主が上手に坊主を殺した」事件であり、犯人も被害者も坊主である。坐禅を組ませ雪の中に死体を放置したり、トイレの便座に死体を突き立てたり、奇怪すぎる殺害方法・犯人も動機も被害者の選別もまるで不明。加えて寺の中は坊主たちの宗教的観念で成り立った世界であり、関口たちは今回異物、招かれざる客として、何が何やらわからないまま事態は悪い方に進んでいく。仏教について、知っているようで違いを知らない人が多いと思われる現代で、私も同じく無知なまま20年以上生きてきたが、今作でわかりやすく知ることができてよかった。

H絡新婦の理(小説) 京極夏彦著
 聖ベルナール女学院では、願えば人殺しすら叶えてくれる悪魔「蜘蛛」と、蜘蛛を崇拝する「蜘蛛の僕」がいるという噂があった。教師の本田に暴行された小夜子は復讐のために、親友の美由紀は小夜子の慰めになりたいと願うために、蜘蛛の僕と接触を果たす。所詮噂だと思っていた二人だったが、願ったその日本田が首をねじ切られ死亡しているのが見つかる。それは世間を騒がせている絞殺魔の所業だった。世間ではさらに目潰し魔と呼ばれる殺人犯も出回っており、二つの事件は蜘蛛の巣屋敷と呼ばれる旧家・織作家で糸のように繋がっていく。
 そもそも売女の概念はどうやって生まれたのか。古来日本では、女が男を選ぶ時代や、卑弥呼や持統天皇のように女が国のトップに立った時代がまずあった。しかし、次第に男尊女卑が激しく社会に制度として現れ、女性は長い時間をかけて女の尊厳や地位を取り戻した。今作に出てくる織作家は、女が男を選んでいた一妻多夫の家であり、時代とともにそれを自らも周囲も「冒涜的な事」と捉えるようになってしまった。今作は女性の尊厳を描いた作品であり、序文とエピローグにある「あなたが蜘蛛だったのですね」と桜の舞い散る中で京極堂が犯人を名指しする場面は、事件が終わった後だと印象が変わる名文。

I塗仏の宴 宴の支度(小説) 京極夏彦著
 ぬっぺっぽう・うわん・ひょうすべ・わいら・しょうけら・おとろし、の妖怪の名前がついた六つの短編から成る「塗仏の宴 宴の支度」。前作までの登場人物たちの視点で描かれた、時系列もばらばらな作品だが、短編集ではない。合間合間に挟まれる関口の夢の光景が徐々にはっきりと形になり、「おとろし」の最後で木の下から女を眺めているのが関口であり、夢ではなく現実で、女が「おとろし」の文章視点の織作茜であったことがわかると、一気に六つの短編が繋がり、読者もまるで夢から覚めるような心地になる構図になっている。そしてタイトルを見返して胸が高鳴る。今作はあくまで「宴の支度」であり、宴はまだ始まっていないのだ。あくまで宴の前提・伏線としての今作のそれぞれの短編は、どれも未解決のまま曖昧に終わる。そして「宴の始末」で一気に回収される。何やら大掛かりなことが始まるらしい、という予感をひしひしと感じさせる「前日譚」だった。
2018/9/30(Sun)23:51 ...No.1655
▼TA平野
近年はマンガの実写映画化が続きましたが、『BLEACH』は一本の映画作品として成立するように結末を変えているというのが面白いと思いました。続編前提で制作したにもかかわらず不入りであったために中途半端なまま終わってしまった実写版を知っているので、原作の再現度よりも映画としての完成度を優先するやり方も増えていってほしいです。
2018/10/18(Thu)11:32
▼三年 平田 RES
夏休み課題30点(6〜13)

E 花のズボラ飯(漫画) 原作︰久住昌之 漫画︰水沢悦子
単身赴任の夫を持つ主婦、駒沢花、30歳。花は今日も自分のためだけに、ズボラだけど美味しいご飯を作る。
食べ物以外の描写にトーンを用いていないように見えるのが、素朴さを増している。単身赴任の夫がいないので一人ご飯を作り食べる様子が楽しそうで可愛い。めんどくさがりな花に、共感しつつ、家にあるもので作れるため、こちらも料理してみようと思える。友人みずきの悩みで少しシリアスになったりもするが、花の明るさで作品の明るさは損なわれない。花の大袈裟ともいえるリアクションとくるくる変わる表情で常に楽しめる。登場人物は基本1人なのに台詞が多く、花と会話している気分になる。

F ねこだまり(漫画) 郷本
お疲れOLの誰かさんは、個性的な3匹の猫たちと同居中。食事の邪魔はされるし、掃除も大変、さらにつれない彼らの態度に一喜一憂。ふりまわされっぱなしの毎日だけど、やっぱり幸せなのでした。
主人公・私の名前が登場せず、疲れたOLさんに感情移入がしやすいように感じる。1話ごとに私目線、猫目線が繰り広げられる。猫がただただ可愛らしく、人間が猫を飼っているのか、飼わせていただいてるのかわからなくなってきた。猫と暮らしたいです。1巻は主に一番最近やってきた元気すぎるチビの出番が多かったように感じるので、次巻以降は他猫も気になるところである。

G さめない街の喫茶店(漫画) はしゃ
ある日突然、眠りから目覚めることができなくなったスズメは、「ルテティア」という“さめない街”に迷い込み、喫茶店「キャトル」で働くことに。美味しい喫茶メニューと魅力的な夢の住人達と紡ぐ、新感覚のグルメファンタジー。
全体的に青みがかった画面であり、独特の雰囲気がある。初期設定が「目覚めることができなくなった」「さめない街」であり、帯には「現実の世界を思い出してはいけないような気がして、私はいつものように考えるのをやめ、お菓子を作る」とある。お菓子を作るという行為はスズメにとって一種の逃避行動であると伺える。私はグルメファンタジーというジャンルを初めて目にしたが、グルメとは趣味であり、また常に逃避行動なのではないかと考えさせられた。
ルテティアの人間はみなスズメのように目覚めなくなった人間なのか、また「夢を見ない」とスズメが言及するように全くの別人なのか、ルテティアの住人にも謎が多い。ルテティアは現実とかなり違うらしく、これらすべてがスズメの妄想、夢であったとしたら、恐ろしいなと思った。さいごに、寝ているスズメが回想する、幼い頃のスズメと妹ヒナが描いた絵の“ひみつきち”がルテティアに非常に似ていることも気になる。スズメにとってルテティアが平和で幸せであり、この夢からさめることが彼女にとって幸せなのか、そうでないのか。夢からさめない、という設定を今後どう活かしていくのか楽しみである。

H 麻実くんはガチ恋じゃない!(漫画) ひととせはるひ
男子大学生・皆川麻実は、売り出し中の新人舞台俳優の高良涼のおっかけをしている。出演舞台はもちろん多ステ、ブロマイドが出れば全種類数十枚買い、SNSが更新されれば即コメント。ただ、ひっそりと応援できるだけで幸せ。そう思っている麻実だったが、実は高良も麻実を気にかけていて…。
読んで気づいたが、BL作品だった。基本は四コマ漫画形式だが、後半はコマ割りされる。高良を通し新体験をしていく麻実と、そんな麻実に励まされ頑張る高良に、まったく通じあっていないのに切磋琢磨している様子が微笑ましい。また高良のマネージャー・加賀美と麻実の友人・政時がカフェを通し惹かれあっていくのも同時展開され、こっちの方が幾分進展がありそうである。男ファンが接触に行くこと、男性俳優を応援するということの苦悩を、俳優目線からも描いた、ファンと俳優の距離感をうまく表現する作品だった。

I ワンルームワンコ(漫画) 正田しろくま
中庭ドッグラン付、6畳一間のワンルーム、【ハイツ犬養】で暮らす、サモエドのぽてまると飼い主のひとみ。1人と1匹と、周りの住人とワンコ達とのワンダフルライフを描く。
おっきなぽてまると暮らすためにわざわざ引っ越したひとみの犬愛が溢れている。ぽてまるがひとみに答えるように手書きで台詞が書かれたり、表情豊かなキャラクターが多かったり、全体的に明るい。全員犬
が大好きで、登場する犬種も多いので、犬好きにはたまらない作品だと思う。ひとみの職場の同僚との恋愛も絡んできて、犬と暮らす日常をほのぼの描いている。

J うさぎは正義(漫画) 井口病院
空腹でボロボロになっていた二頭のオオカミの前に現れたのは、圧倒的な戦闘力とカリスマ性を持つうさぎだった。そして始まるボス(うさぎ)と手下(オオカミ)の自然界大逆転ヒエラルキーライフ!
すべてのうさぎが幸せに暮らせる国を見つけるため旅をはじめる3匹。設定は壮大だが、登場はすべて動物だし絵柄がコメディなことが多いので、ギャグコメディに落ち着いている。うさぎが好きすぎて過敏になっている狼2匹が可愛い。うさぎの習性に振り回されるオオカミという、自然界とは本当に真逆なキャラクター設定が面白い。また、本の半分は人間と共に生活をするうさぎの物語であり、作者のうさぎ愛がすごいことが伝わってくる。ただ、人間にまざり働いたり合コンしたりするうさぎは斬新すぎると思った。

K 春の呪い(漫画) 小西明日翔
夏美にとって世界の全てだった妹、春が死んだ。妹の思い出をめぐるため、夏美は春の婚約者だった冬吾と2人が行った場所へ行くという条件で冬吾と交際する。
家柄の都合で巡り会い、交際を始める春と冬吾。春は冬吾を本気で好いていたが、冬吾は自分の印象と春から聞く印象が全く異なる夏美のことが初めから気になっていた。そして、夏美は世界の全てだった春が好きだった。死が入り込むことで、一層ややこしくなった三角関係だったが、死がないとこの三角関係は始まりすらしなかった。死が物語のきっかけという点では、この作品が全体的な暗さを纏うのも頷ける。死んだ春のSNSを見つけ、自分が振られてしまったことを知る夏美。冬吾と夏美が結婚するくらいなら姉を殺したい、冬吾には幸せになってほしいと残す春。しかし、冬吾の幸せはその夏美に握られていることがあまりにも残酷だった。冬吾と付き合うことで春に呪われると思って罪悪感で死のうとする夏美は、最後、後ろを振り返り春の姿がないことで、ようやく春の死を自覚する。春の面影におびえ依存していた夏美が、冬吾との逃避によりすべてを振り切り前に進み出すラストは謎の爽快感を覚えた。冬吾も家に従い続けた人生から脱却する。冬吾にとって、春は救いになり得なかったのだと思うと、春がかわいそうに思えた。最後まで2人を苦しめる春を嫌いになれないのは、同じ分だけ春も苦しんだからだと感じる。表紙、1巻は春で、冬吾だけが夏美を見ている。しかし、2巻は冬で、お互いに見つめあっている。春を見ていた夏美が、冬を見るようになる表紙のからくりが美しいと思った。

L たとえばこんなRe:Start(漫画) 古茶
広告代理店に勤務するデザイナーの木嶋尚人は、名前以外のプロフィールが一切明かされていない広告デザイナー・高倉遼に憧れている彼のマニア。ある日、彼の事務所の求人を見つけ転職するも、思い描いていた高倉とかなり違っている高倉遼本人と出会う。
全体的に画面が白く、多少の物足りなさを感じる。凄腕のデザイナーと言われる高倉遼の作品が作中一度も描かれないことも、物語を物足りなくさせる一因ではないかと感じた。デザイナーの物語であるのにそのデザインが登場しないのは、この作品が仕事ものではなくキャラクターにスポットを当てたものだからだと思うのだが、それならばデザイナーである必要はないのではないかと思う。やはりせっかく漫画で表現するのならば、1枚でも彼らのデザインが見たかった。若いことで自身の作品を軽んじられることが嫌で高倉はプロフィールを明かしていないのだが、その未熟さゆえに作品が評価されないことを嘆く木嶋を受け、高倉も成長する。木嶋が前向きかつ純粋なので、気づけば魅了されている。キャラクターとその成長の描き方は良かった。
2018/9/30(Sun)23:31 ...No.1654
▼三年 平田 RES
夏休み課題30点(1〜5)

@ 未来のミライ(アニメ映画) 監督脚本︰細田守 制作︰スタジオ地図
とある都会の片隅。小さな庭に小さな木の生えた、小さな家に暮らす4歳のくんちゃんは、生まれたばかりの妹に両親の愛情を奪われ、戸惑いの日々を過ごしていた。そんな彼の前にある時、学生の姿をした少女、未来からやってきた妹ミライちゃんが現れる。ミライに導かれ、時を越えた冒険に出たくんちゃんは、かつて王子だったという謎の男や幼い頃の母、青年時代の曽祖父など、不思議な出会いを果たしていく。
率直にいえば、謎が多く残る作品だった。世間で賛否が分かれているのも頷ける。
細田守監督は自身の経験から作品を生み出すことが多い。サマーウォーズ、おおかみこどもの雨と雪、バケモノの子とこれまで家族にフューチャーした作品を送り出してきたが、これらはすべて細田守監督ご自身の経験からアイデアを得ている。家族という点から見たら、これまでの家族を取り上げた3作品で一番ごく普通のありふれた家庭の日常を描いていたように感じられる。未来のミライの中のこの家族は共働き家庭、ここまでは一見普通だが、主な家事は在宅ワークである父親の役目へと、未来の誕生によりすり変わる。様々な家庭のあり方が存在する現代において、家庭の多様性を見た気がした。
注目したいのは、4歳児イヤイヤ期のくんちゃんの所作のこまかさだ。未来ちゃんに初めて触れるときの指や目線、表情などがあまりにリアルで、ホームビデオを見ているような気持ちになった。未来ちゃんに両親を取られた嫉妬に加え、ズボン一つが気に入らないだけで愚図るなどイヤイヤ期の子どもの特徴が全面に押し出されており、子どもが嫌い、苦手な人にはこの作品は不向きであると感じた。個人的には1番上として育ったし歳の離れた妹がいるためまあこんなもんだよなとすんなり受け入れられたが、大衆向けではないだろうと思う。
大衆向けでないと思う理由に、細田監督の趣味が全面に押し出されていたことも含まれる。途中飼い犬の擬人化?の青年が不思議な人物としてくんちゃんと出会うが、そのしっぽを奪いお尻に指すと、くんちゃんが犬に変身する。サマーウォーズのアバターやおおかみこども、バケモノの子などから細田監督はケモナーであると推測できるが、この変身はあまりに唐突で視聴者を置いてけぼりにする気がした。また、ミライちゃんにつんつんされて頬を赤らめる性癖の芽生えのようなシーンも見受けられるが、さすがに4歳児にその表情はまずいのではないかと心配した。
私が一番謎だったのが、ミライちゃんの存在だ。題に掲げられている存在にも関わらず、登場時間も短ければ作中で大きくメインになるわけでもないように感じた。確かに、くんちゃんのはタイムスリップにより、過去の親族と触れ合うことで多様な価値観を見出し、最後には未来ちゃんを守る、兄としての自覚が芽生える。そのタイムスリップの要因となるのが未来のミライちゃんなのだが、なぜ彼女がくんちゃんをタイムスリップさせるのか、あまりにも疑問だった。また途中くんちゃんは例のごとく癇癪を起こし家を出る。そこで、不思議な電車に乗る前に男子高校生と出会う。この男子高校生がとても格好よかった。彼は未来のくんちゃんであると推測されるが、この男子高校生は「まさか行く気じゃないだろうな」と電車に乗ろうとするくんちゃんを引き止める。彼がくんちゃんであるならば、自身が辿った過去を知るはずなのだ。なぜ彼は登場したのか。好みだったためすべて吹っ飛んだが、ミライちゃんよりも彼の存在の方が謎は多い。そして一人電車に乗り辿りついたのは不思議な東京駅だ。ここでくんちゃんは迷子としてお母さんの名前もお父さんの名前も言えず、自身が何者であるか証明できずに一人ぼっちの国行きの電車へ案内されてしまう。この一人ぼっちの国は、「死」であると考えた。まだ幼い、保護の元育つ子どもは、1人では死んでしまう。これまで癇癪を起こしていた自分を振り返り、またタイムスリップでの交流により自分の生い立ち、先祖の生き様を見ることで、自分という命を認識し、自己を確立した上で、兄であるという自覚を持つ。1人になり死を近くに感じる追い詰められた状況で4歳児に果たしてここまで出来るだろうかという疑問はあるが、ただ、「くんちゃんは未来ちゃんのお兄ちゃん!」と自覚することだけがくんちゃんの自己証明であったことから、くんちゃんの成長を素直に見られたのは嬉しかった。となるとミライちゃんのタイムスリップがなければくんちゃんの兄としての自覚は生まれなかった。妹である未来ちゃんはくんちゃんに兄であってもらわなくては困るため、タイムスリップを行ったと考えられる。ただ、やはり題を背負うほどこのミライちゃんが作中の重要なキャラクターであるかどうかはやはりわからない。
未来のミライ展にも出向いたが、この疑問は晴れなかったため、またDVDで深く考察していきたい。

A スピカ 羽海野チカ初期短編集(漫画) 羽海野チカ作
羽海野チカがデビュー当初、各誌に描いた珠玉の短編をついに集約して一冊に…。少年探偵・バレエ・ショートストーリー・エッセイなど様々なジャンルを集めた短編集
印象に残ったのは、「冬のキリン」と「はなのゆりかご」だ。
冬のキリンは、巻頭にカラーで乗せられている6ページの短い物語。パパと動物園に来たボクは、そこに佇むキリンを見て、昔バイクで世界を駆け巡っていたパパをここに縛り付けているのはボクなのではないかと気づく。
ママを亡くしたがそのママの誕生日に過去に家族3人で訪れた動物園を、残された2人で訪れるというなんとももの哀しいシチュエーションだ。キリンはあつい国の動物なのに、見たい子どもがいるこの寒い国にぬい止めてしまっている。ボクは、そんなキリンと、世界を駆け巡っているはずのパパを重ね合わせ、本来あるべき場所から彼らをぬい止めてしまっている自分に気づき涙する。しかし、パパはボクが泣いているのはママと来た動物園でママを思い出したからだと思っている。すれ違いが一層切ないと感じた。身体が弱いと見られるボクは、なおさら一人残されたパパを縫い付けていると感じるのだろう。親の心子知らずというが、子の心も親はわからないものだと思った。

B 好物はいちばんさいごに腹のなか/好物はこっそりかくして腹のなか(漫画) 蔓沢つた子
オスもメスも区別なく子供を産むことができる、猫を先祖に進化を遂げたと言われているこの世界。施設育ちの過去から家族に対する憧れが強いカズイ(雑種)は、“父親はいなくていい、ただ自分と血のつながった家族がほしい”と手当たり次第に子種漁りをする日々。
ある日、バイト先の店長の紹介で売れっ子モデル・ノア(純血)の専属マネージャーになることに。いつも何かと自分のことを気にかけてくれるノアとの時間に居心地の良さを感じはじめ、子供さえいればいいと思っていたはずなのに幸せな家庭を想像してしまい――。
1冊目は親世代、2冊目はその子供世代の話だ。
前提が特殊設定(猫耳、フェロモンにより発情させれば男女とも孕める、そのため同性でも可能、年齢に関係なく見た目は一定 など)のため、人を選ぶ作品であると感じた。そもそもがBL作品である。
どの話、カップルもハッピーエンドで終わるのはよかった。大体が引っ込み思案ネガティブ思考と押せ押せ愛が重い系の組み合わせだった。中でも面白いと思ったのは、2冊目に含まれる「好物はあまくとかして腹のなか」のカズヤとルークのお話だ。分離不安症という好きになった相手に依存してしまい片時も離れられなくなる症状をもつルークは、幼い頃から可愛がってきたカズヤが好みど真ん中に育ち気があったが、分離不安症のため性質上恋人が作れず彼との未来を諦めていた。しかし、カズヤのなかなかに強引なアピールで、彼のみに依存することを決める。そのうちずっと一緒にいることが当たり前になったことが怖くなったルークは、こっそり1人で逃げ出す。その理由が、カズヤといてみたら思った以上に幸せで、いつ死んでもいいと思った自分が怖かったというもの。この理由を読んだ時、藤原義孝の「君がため惜しからざりしいのちさえ 長くもがなと思いけるかな」を思い出した。あまりにも考え方が真逆で、様々な愛の形があるのだなあと思った。

C アニコン(漫画) やぶうち優
かっこいい義兄のことが大好きな東雲真綾(通称まあち)。しかし、義兄・理一にはオタクという残念な部分があった。かくれオタクとして過ごしていたが、同じ学校の西園芽衣・潤姉弟にバレてしまう。実は芽衣もかくれオタクだった。西園に誘われ、真綾もコスプレに供するようになる。
オタク仲間として芽衣と仲良くする理一を見て、不安になるまあちや、真綾が潤に告白される、隣に引っ越してきた憧れのアニメーターの妹に理一が告白されるなど、少女漫画の定番を詰め込みつつ、オタク文化を取り上げていて面白い。理一がかくれオタクとなったのは、もともと付き合っていた彼女に「キモイ」と言われたと真綾が勘違いしたことからだが、2006年の連載段階でオタク=キモイと定義づけている。しかし、その一方でコスプレしてビックサイト(?)に行っていたりわりとリアルなオタクを描いている。最終話ではなぜオタクはキモイとされるのかについて理一が言及している。
芽衣が女の子が恋愛対象だったり、最終的に理一と真綾が義兄妹でありながら恋に落ちたり、オタクだったりと色々障害の多い部分が見られるが、潤を筆頭に周りはそれを受け入れる。好きなものを好きということの大切さを教えてくれる作品だった。

D おにがわら横丁三丁目(漫画) 八神千歳
両親が海外に転勤してしまったかなでは、隣町のおじいちゃんのところに行くことになった。しかしおじいちゃんはえろじじいだし借金取りに取り立てられている。そのおじいちゃんが営むお店の品、封印玉に捕えられていた赤鬼が現れる。赤鬼は500年前に仲違いして別れた自身を封印した青鬼を探しているが…。
かなではたびたびごく普通の私として自称するが、この作品内においてかなでは本当にごく普通の少女で驚いた。大体普通ではないのに。次第に惹かれ合うかなでと赤鬼がじれったい。最後タイムスリップし、赤鬼と青鬼の仲違いを目撃するかなでは、2人の勘違いに気づき、仲を取り持つ。解決したかと思いきや、畳み掛けるように赤鬼が鬼として暴走し、かなでを襲うようになる。最後、赤鬼は自ら封印されようとするが、かなでの健闘により赤鬼は鬼ではなくなり人間となる。異種間恋愛の作品かと思いきや、最後は人間同士になる。仲良しの青鬼は鬼のままのため寿命が続くが、赤鬼は人間となったため先に逝く。赤鬼と青鬼の友情と、赤鬼とかなでの恋愛と両方を描いた良い作品だった。
2018/9/30(Sun)23:29 ...No.1653
▼TA平野
『未来のミライ』については藤津亮太のコラム「アニメの門V」第37回で詳しく分析されています。しっぽのシーンの解釈は納得できましたが、やはり「細田の趣味ではないのか」と疑ってしまいます。この作品は良くも悪くも「血縁」がすべての基準なっているところがあり、そのような点も賛否が分かれる原因なのかもしれません。
2018/10/18(Thu)11:22
▼四年 平田
藤津亮太「アニメの門V」第37回拝読しました。
くんちゃんが「兄の自覚」でなく「自己の自覚」のために未来が必要だったというくだりは素直に納得しました。くんちゃんの自己を呼び起こすきっかけとなった妹の未来は、私が思ったよりも重要人物であったことがわかりました。きっかけとなる赤ちゃんの未来だけでは物語を進められない、だからこそ未来からある種ヒロインとしての未来を連れてきたのかなと思います。
2019/7/25(Thu)16:24
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